出会いは、どこに転がっているか分かりません。
仕事先で、デパートで、コンビニで。
でも、その出会いがその場で終わるか、長い付き合いになるかは、自分次第です。
視線を感じて…
乗客の少ない昼下がりの電車内。
視線を感じてふと目を上げると、目の前に座っている男性とばっちり目があっちゃいました。
浅黒い肌のいかつい風貌。
黒いドレッドヘアを緩く束ねて、ゆったりとしたエキゾチックな服装。
そして、松葉杖。片足はギブス。
ちらほらと空席もある電車内で、いやでも目立つ男性です。
そんな男性が、笑顔ですずこを見つめています。
真顔なら、さぞかし迫力満点だろうと思われる怖い顔立ちの男性に、にっこり微笑まれると、そのギャップで思わず、キュンとなりやすいすずこ。
今、まさにその状況!!
ナンパって、どれも似たようなものよね。
思わず微笑みかえすと、英語で何やら話しかけられました。
まぁ、こういう時の会話は、どのナンパも似たようなもので、
「やぁ、元気かい?」
「今からどこ行くの?」
そんな当たり障りのない簡単なおしゃべりがメインです。
アメリカ人で、日本に住んでいて、うっかり足骨折しちゃって…。
そんな事をにこにこと話す彼に、相づちをうっていると目的の駅に着きました。
席を立つすずこを無理に引き止めず、連絡先だけをさらっと渡すアメリカ人。
はいもいいえも言わず、にっこり笑顔を返し、電車を降りました。
さて、返事、どうしようかな?
2日、考えた。
連絡先を貰ってから、2日考えました。
- 連絡するべきか?
- 無視するべきか?
さて、どうする?
貰った連絡先は、メールアドレス。
変な人だったら、個人情報は伝えたくないしな〜。
でも、なんか面白そうな人だったしな〜。
さて、どうしようどうしよう???
連絡するタイミングもあるよね?
まだ、じらす?そろそろ、連絡した方がいい?
連絡先を渡してくるってことは、彼はなにかしら期待しているのだろうけど、今のところ、親密になりたいとかは、考えてませんよ。
面白そうな人だったから、お友達ぐらいにはなってみたいかな?
という程度。
さてさて、連絡どうしよう???
メールアドレスを作ってみた。
普段使っているメールアドレスは使いたくなかったので、使い捨て出来るフリーのメールアドレスを1つ作りました。
これで連絡すれば、変な相手だったら、いつでもすぐに、はい、さようなら。
じゃぁ、またね。
なんだかぎこちない文章だけど、まぁ、良しとしましょう。
『会えて嬉しかったわ。』だと、何か期待してるみたいだし。
『また、会いましょう。』だと、さらに何か期待してるみたいだし。
相手の出方をみたいので、メールの中身は、最低限で。ごく簡潔に。
ドキドキしつつ、ぽちっと送信。
これって、メル友???
次の日に返ってきたメールは、1行しか書いていないすずこのメールに対して、ずらっと5行ぐらいの文章量。
君すごく美人だよね。
また、是非、会いたいな。よかったら、電話くれないかな?電話番号書いておくね。
近いうちに、君にまた会いたいな。君に会えるの楽しみにしているね。
なにやら、テンションの高そうなお返事です。
う〜ん、さて、返事どうしよう。とりあえず、まだ、会う気はないよ?
これまた、数日寝かしてから、控えめなお返事を送りました。
日本にはいつから住んでいるの?足、お大事にね。
メールの返事は、相手より短めに。
特に、親しくもない間柄なら、無愛想にならない程度に、簡潔に。
会話のキャッチボールを続けやすくするために、質問文を一つは入れる。
王道中の王道ですが、こういう小技はやはりよく効きます。
すぐに返事が来ました。
僕はギタリストなんだ。君にも僕のギターを聞いてほしいな。
今度いつ会える?美しい君に会えるの楽しみにしてるよ。
電話してほしいな。…
『美しい君』…歯が浮くような言葉が、さらりと書かれています。
日本人だったら、絶対書かないような言葉だね〜。
メールの最後は、いつも電話番号。
メールの応酬が続くにつれ、どんどん長くなる彼からのメールの文量。
辞書片手に英語のメールを読むのも、だんだん億劫になる文量です。
そして、半分はすずこを褒め称える内容…。
1回しか会ってないのに、なんでそこまで褒められるんだ???
褒められれば、褒められるほど、すずこの頭の中は冷静になっていきます。
え〜、もう、なんか飢えた感じがすっごいするんですけど?
- 『電話してね。』
- 『電話待ってるよ。』
- 『どうして電話してくれないの?』
- 『いつ会える?』
- 『君に会いたいんだ。』
そんな言葉と共に、メールの最後にはいつも電話番号が書いてあります。
め、面倒くさいよぅ。重いよぅ。
英語の練習がわりにもなる。
とメールのやり取りを楽しんでいたものの、あまりにしつこく会いたがる姿勢に、楽しむ気持ちが失せていきます。
あ〜、これ、会ったら会ったで、すごく面倒くさそうだよ。絶対。
気になる事を聞いてみた。
メールのやり取りをしていて、ずっと気になっていた事。
『一体、彼は何歳なんだろう???』
しつこいぐらいに書かれる、会いたいメールに、少し多めの質問を書きました。
貴方は、一体いくつなのかしら?
恋人はいるの?奥さんはいるの?子供はいるの?
いつまで日本にいる予定なの?…
あれだけ熱心に口説き文句を送ってくるのだから、シングルそうだけど、確認は大切です。
彼女がいても、ほかの女を口説く男もいるしね。
見た目、それなりに年いってそうな雰囲気だったものの、外国人の年齢はホント分かりにくい!
やはり、そこも確認しておきたいポイントです。
言い訳はやめようよ。
少々プライベートな事を聞き過ぎかと思ったものの、気になる事は聞いておきたい。一番返事が待ち遠しいメールを送った翌日、これまた長いお返事が届きました。
恋に年は関係ないよ。年齢なんて、ただの数字だよ。重要じゃないよ。
僕はかつてアメリカで結婚していたけど、離婚したんだ。離婚で傷心の僕に、友人が日本へ行く事をすすめてくれたんだ。
今ではすっかり元気だよ。そして、君に恋している。彼女はいないよ。だって、君に恋しているから。…
………長い!!そして、重い!!
『年齢は関係ない。』『ただの数字だ。』『そんなの重要な事じゃない。』
年を聞いて、さくっと答えない場合、男女問わず、往々にして自分の年齢を恥じている場合が多いもの。
あ〜、これは、かなり年上だな。おじさんだな。
恋してる。ってそれは、ただの妄想です。
素直に年を答えてくれたら、まだ可愛げがあったのにねぇ。
どうして、男って、別に隠さなくてもいいようなところで、変に隠したり、見えはったりするのかしら???
すずこから見て、隠す必要が無いモノをやたらと隠したがったり、言い訳されたりすると、たとえ興味を持った相手でも、あっという間に冷めてしまいます。
だって、知り合ったばかりなのに、会話のキャッチボールが既に面倒な相手には、長続きさせたいという気持ちも失せてしまうもの。
そして、そのメールを最後に、すずこは返事を返しませんでした。
その後、何度か、メールが届いていたものの、すべて無視。
教訓
ナンパ相手との連絡先交換は、いつでも縁が切れる連絡先にしておきましょう。
LINEや、FACEBOOKのメッセージ機能などの「既読」「未読」が相手に分かってしまう連絡先は、ブロックがしやすい反面、
「僕のメッセージ読んだよね?どうして返事くれないの?」などと、面倒な事にもなりやすいので、さけた方が無難です。
文: すずこ