アイリッシュパブで、セクハラまがいのブルガリア人にナンパされました。

アメリカ留学を控えた友人と、なんとなくノリで入ったアイリッシュバー。

そこで出会ったブルガリア人は、セクハラまがいのナンパ野郎でした。

 



最初は、いつものご飯会

長年の夢だったアメリカ留学に行く事になった親友のC子と、お気に入りの居酒屋さんで久しぶりに一緒にご飯を食べました。

美味しい日本酒と居酒屋メニューに舌鼓を打ちながら、夢一杯にアメリカ留学について話すC子。

 

すずこ
留学中にアメリカ人の彼氏出来ちゃったりしてねー。
C子
えー、そしたら、留学後、日本に戻りにくくなっちゃうじゃない。アメリカと日本の遠距離恋愛って、大変そう〜。

 

そんなたわいもない話に華を咲かせながら、お腹いっぱいになるまで食べて飲んで、ほろ酔い気分でお会計をすませて、外に出ると、ほんのり赤い顔をしたC子が言いました。

 

C子
ねーぇ、もう1軒行こーう。

 

飲むとなったら、とことん飲みたい。

 

それがC子です。

翌日、二日酔い故の死んだ魚の目になった事、数知れず…。

 

すずこ
いいけど、また居酒屋?他のとこにしようよ。
すずこ
いい店あるよー。
この間、教えてもらったんだー。

 

 

ドキドキ初体験。一見さんでも大丈夫?

外国人の友達が多いC子。

その友達の誰かから教えてもらったという、小さなアイリッシュパブに行く事になりました。

C子
なんかねー。
小さいお店だから常連が多くて、いい感じらしいよ。
すずこ
アイリッシュパブって行った事ないんだけど?どんなとこ?
C子
えーとね。ビール美味しいかも。私も初めてのお店なんだよね〜。

 

いい感じに酔っぱらっているC子は、すずこに返す言葉もなんだか適当です。

賑やかな繁華街を抜けて、少し人通りの少ない裏道を歩いて行くと、何の変哲も無い雑居ビルの前でC子が足を止めました。

 

C子
あー、あったあった。ここ。
ほら、ここの3階のガラス窓のとこ。

 

見上げると3階部分は全面ガラス張り。

テーブルや椅子はなんとなく見えるけど、人影が全くありません。

 

すずこ
ねぇ、常連ばっかりって言ってたけど、紹介とか無くて大丈夫かな?入れるかな?
C子
大丈夫だよー。常連さんが多いってだけで、誰でも入れるって言ってたもん。

 

足取り軽く3階に向かうC子の後を追うすずこ。

パブの入口は、なんだか重そうな木の扉です。

ぐいっと引くと、チリリンとなる鈴の音。

 

C子
ハロー。

 

 

え〜、ちょっとなんでハローなのよ?

全く物怖じしないC子に、内心ドキドキしながら続きます。

C子の肩越しに見えたのは薄暗い照明。

その照明の下、細長いバーカウンター越しに外国人のお兄さんがにっこりしています。

 

すずこ
え、ここ日本人いないの?

 

見渡してみると、数人のお客さんがいる模様。

でも、なんだか、みんな外国人みたい。

 

すずこ
ちょ、いいの?うちらここ入っても?外国人専用とかじゃないの?
C子
やだな〜。外国人が多いってだけだよ。
別に日本人でも大丈夫〜。

 

壁際にあるいくつかの丸テーブルには、ぽつんぽつんと、いかにも常連そうなお客さん達が座っています。

何となく、席が決まっているかの様なその座り方に、まだ誰も座っていないバーカウンターへと、自然と向かうすずことC子。

 

日本語?それとも、英語?

バーカウンターの中央辺りに、ちょこんと座ったすずことC子。

ニコニコと人懐っこい笑顔を浮かべたバーマンのお兄さんが近寄ってきました。

バーマンにビールを2つ注文し、店内をきょろきょろ見渡す2人。

お世辞にも流行っている、人気の店。

という雰囲気ではありません。

ビールを持ってきてくれたバーマンに、ずけずけと聞くC子。

酔っぱらいは怖いもの無しです。

 

C子
ねぇ、なんで、こんなにお客さん少ないの?赤字じゃない?
バーマン
あ〜、え〜っと(苦笑)

 

常連客でもない。

ましてや、初めてのお店で聞く事ではありません。

 

バーマン
まだ、はやいからね。
もうすこししたら、たくさんくるとおもうよ。

 

たどたどしく拙い日本語でそう返され、外国人が話す日本語の拙さがいかに可愛らしく響くかで、話が盛り上がるすずことC子。

ふと気づくと、店内には先ほどよりお客さんが増えています。

さっきまで、貸し切り状態だったバーカウンターにも数人座って、各々お酒を楽しんでいる模様。

そして、耳を澄ませて聞いてみると、外国人のお客さんとは、英語で会話しているバーマン。

次、バーマンが傍に来たら、英語で話しかけてみようね。

そんな事をC子と話していると、また、誰かお客さんがやってきました。

何気なく、入口の方に目を向けると、どうやら、年が近そうな外国人男性が1人。

お客さんの年齢層が高いパブの中で、一直線にすずこ達の方へやってきました。

 

「となりいいですか?」

黒い短髪にがっちりとした体格、白い肌。

爽やかでお行儀のいい笑顔と物腰でそう聞かれたら、特に断る理由もありません。

C子の横には、いつの間には、他のお客さんが座っています。

2つ空いていたすずこの横の席で、当然の様に、すずこの真横に座るその男性。

 

外国人
よくここくるの?
すずこ
ううん。初めて来たの。
あなたは?

 

たどたどしい日本語に内心萌え萌えしつつ、正直に答えると、C子が身を乗り出して質問します。

 

C子
あなたは、ここの常連さん?どこから来たの?日本で何してるの?

 

さっきからビールをぐいぐい飲んでいるC子は、ここでも酔いに任せて、ずばずば質問します。

 

外国人
えっと、たまにくるよ。
ぼくはブルガリアじんです。
びようしです。

 

C子の勢いに気圧されながら、それでも、丁寧に答えるブルガリア人。

 

すずこ
美容師さん?じゃぁ、どっか美容院で働いてるの?
ブルガリア人
うん。そう。
2ねんぐらいはたらいてるよ。
C子
美容師さん?いーじゃーん。
すずこ、イメチェンしたいって言ってたよね〜。
切ってもらえば?

 

アメリカ留学が決まり、これから忙しくなるから。

と数日前に、長かった髪をばっさり切って、肩上の可愛らしいボブスタイルへと変わったC子。

そんなC子に、1軒目の居酒屋で、確かに、そろそろ髪が切りたい。

と話しました。

話しましたけど…。

 



美容師ですから、髪ネタは得意です。

ブルガリア人
いいですよ。
かみきりますよ。

 

酔っぱらいC子の言葉を真に受けて、ブルガリア人ぐいっと間合いを詰めてきました。

え!?ちょ、ちょっと!!近いから!!

思わず、C子の方へのけぞる程、近づくブルガリア人。

 

ブルガリア人
にほんじんのかみ、かたい。
そしてじょうぶ。
だから、カットむずかしい。
でも、ぼくだいじょうぶ。
きれます。きります。

 

営業トークにしては、いささか不安がよぎる口上です。

 

すずこ
えーと。やっぱり、日本人の髪は切るの難しい?
ブルガリア人
はい。
ブルガリアじんのかみは、もっとやわらかいです。
ねこけおおいです。
C子
ねこけ?あ〜、猫っ毛ね。
あはは、にゃーん。
あ、おにーさん、ビール追加で〜。

酔っぱらいは、すずこの隣でにゃんにゃん猫真似しながら、ビールを注文しています。

ブルガリア人
かみのけ、ながいですね。
じょうぶですね。
どれくらいきりたいですか?

 

C子の合いの手?に気を良くしたのか、間合いを詰めるだけでなく、すずこの髪を手に取るブルガリア人。

ひぃ!!

好きな相手になら、触られて嬉しい髪の毛。

見知らぬ相手に触られて、気持ち悪い事この上無しです。

 

すずこ
あ、いや、いつもお願いしてる美容師さんいるから。
大丈夫だよ〜。
ブルガリア人
だいじょうぶ。だいじょうぶ。
ぼく、きりますよ。
ながいかみですね〜。
ぼくすきですね〜。
たくさんきらないですよ。
ながいのすきですね〜。

 

あんたの好みは聞いてなーい!!

髪を一房取って愛でていたブルガリア人は、その手をそのまま、すずこの後頭部へ。

髪の毛な〜でな〜で♡

あわわわ!!

まさに、背筋がぞわぞわ!!その感触!!

 

すずこ
いや、ほんと。
大丈夫だから。
お願いしないから。触らなくていいから。ね。

 

もう、髪の毛関係ないし!!

すずこの後頭部で、なでなで動く手を振り払おうとすると、そのまま腰までスライドする手。

ちょ!!C子!!助けて!!

焦ってC子を見ると、反対側に座っていた、他のお客さんに絡んでる!!
しかも、そのお客さん、あからさまに迷惑な顔してるよ〜。

C子気づいて〜!!酔っぱらい過ぎだよ〜!!

そんな風に一瞬気が逸れた隙をついてか、気づけば、ブルガリア人、超密着!!

 

ブルガリア人
シャンプーなにつかってますか?いいのおしえてあげます。

 

腰にまわされた手、ぴったりくっつく身体。

すずこの髪に鼻をうずめて、すんすん匂いを嗅ぐブルガリア人。

もー無理!!限界!!帰る!!

 

すずこ
すみません!!お勘定お願いします!!今すぐ!!

 

ブルガリア人の手を振りほどく様に立ち上がり、バーマンを呼びました。

 

ブルガリア人
どうしましたか?なにかしましたか?まだ、おさけありますよ?

 

もう返事はしません。

目も向けません。

お会計のために財布を持つすずこの手に、その手を重ねようとしてくるブルガリア人。

もちろん、手なんて重ねさせません。

大急ぎでお会計を済ませて、大虎寸前のC子を引っ張って、かなり強引にお店から退却。

 

C子
あれ?あれ?なんで?いい感じだったじゃん?
すずこ
何言ってんの!?あれ、変態だよ。
ただのセクハラだよ。
もー髪の毛、気持ち悪い!!

 

怒りまくるすずこと、待ったく状況を理解していないC子。

その後、そのパブに2度と行かなかったのは、言うまでもありません…。

 

教訓

後日、そのしつこかったブルガリア人の話を、行きつけの美容院で、長年お世話になっている男性美容師さんに話してみました。

 

すずこ
ねぇねぇ、やっぱり、ナンパの時って、『美容師だから、髪切ってあげるよ。』みたいな事言ったりするの?
外国人
ナンパなんて、もう結婚してるからしないけど、たまにキャバクラとか行って、お店の女のコ達に美容師だってバレると、ヘアスタイルとかヘアケアの相談とかされて面倒だから、なるべく職業は言わないかな〜。
それ、ホントに美容師だった?
すずこ
え〜、どうかな?名刺とか貰ったわけじゃないしね。
その人が言ってただけだからねぇ。

 

って事は、もしかして、やっぱり、あのブルガリア人は美容師じゃなかった???

どちらにせよ、職業を振りかざして、寄ってくる男は、警戒した方が良さそうです…。

文: すずこ